知っていますか?遺産分割手続から抜ける方法(1)相続分譲渡

法定相続人であっても、親族間の紛争は嫌だ、長い間続いている遺産分割手続から少しでも早く抜けたいとか、裁判所の手続きに参加するのは負担だから抜けたい、などと考える方は少なくないものです。

そんな方は、「相続分の譲渡」や「相続分の放棄」について検討してみるとよいかもしれません。

今回はまず「相続分の譲渡」について書きます。

「相続分の譲渡」とは、文字どおり相続人が有している自分の相続分を(他の相続人に)譲渡することです(民法905条参照)。

これにより、譲渡人は以後の遺産分割手続に参加する必要はなくなり、譲受人が遺産分割手続の当事者となります。

すでに家庭裁判所で遺産分割の手続中である場合には、譲渡後に裁判所に排除決定をしてもらいます(この決定を受けなければ当事者から外れません)。

譲渡は、譲渡人と譲受人の有償又は無償の譲渡契約(贈与契約、売買契約等)によって行い、譲渡人は相続分譲渡証書や印鑑証明書(裁判所の手続中である場合には即時抗告権放棄書も)を提出します。

なお、相続人以外の第三者に譲渡することも不可能ではありません(後の遺産分割手続きに第三者が参加することになるため、うまくいかなくなるおそれがありますが。)。

 

ただし、譲渡後であっても、譲渡人が法定相続人であること自体に変わりありませんので、相続人として相続税の申告が必要となるほか、被相続人が負っていた債務の法定相続分について債権者から履行を求められればこれを拒絶することもできません(この点は「相続の放棄」(民法939条)とは異なる点です。)ので、被相続人の負債の有無、金額に注意が必要です。
また、預貯金の相続手続きに当たっては、金融機関が法定相続人である譲渡人の署名、押印を求めてくることも多いようです。

次回に続きます。

 

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