遺産の一部分割(1)一部の遺産についてのみ遺産分割をすることはできるのか

実務上、相続人間で意見が合わない遺産はさておき、とりあえず分割協議ができそうな遺産の一部についてのみ、相続人間で遺産分割協議をすることはよくあることです。

もっとも、これまで遺産の一部分割について民法に直接の規定はなかったのですが、相続に関して予定されている法改正により、一部分割について明文の規定が置かれる予定です。

その規定の内容は、

①共同相続人は、(被相続人が遺言で禁じた場合を除いて)いつでも協議で遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

②その協議ができないときは、家庭裁判所に対して遺産分割の請求をすることができるものとする。ただし、「遺産の一部を分割することによって他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」については一部の分割請求ができない。

といったものになる予定です。

これまで、裁判所では主に、遺産の一部について遺産分割協議が有効に成立するための要件として、相続人間でその一部を残りの部分から分離したうえで分割をするとの合意が存在していることや、民法が定める遺産分割の基準に照らし、遺産全体の総合的配分にそごをきたさず、残りの財産の分配によって相続人間の公平を図ることが可能であることなどを必要とする考えがありました。

今回の改正法は、基本的には遺産の一部分割協議は共同相続人の協議によりいつでも(自由に)できるものとしつつ、家庭裁判所に遺産分割の請求をするに当たっては、②の「遺産の一部分割が他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」に該当しないことを要することとしたものといえるでしょう。

どういった場合に、②の「遺産の一部分割が他の共同相続人の利益を害するおそれがある」として家庭裁判所に対する遺産分割の請求が認められないことになるのか、明確には今後の裁判例の積み重ねを待つことになると思います。

次回に続きます。

 

 

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