《民法の相続法制の改正》民法改正前に作成された遺言書への民法改正の影響

前回からの流れで、民法改正前に既に作成されていた遺言書に、民法改正によって遺留分についてどのような影響が発生するのかについて、書きます。

前回同様、遺留分減殺等の請求をする者を権利者とし、減殺請求等を受けた相手方を義務者とします。

 

まず、改正民法は、経過措置として、改正の施行後に開始した相続について適用され、改正の施行前に開始した相続については,旧法が適用されるのを原則としております。

遺留分に関しては、その点について例外的な定めが規定されておりませんので、この原則どおりということになります。

つまり、改正民法の施行後であっても、改正の施行前に相続が開始した場合(施行前に死亡した場合)については、改正後の新法の「遺留分侵害額請求」の規定ではなく、改正前の旧法の「遺留分減殺請求」の規定が適用されます。

逆に、改正の施行後に相続が開始した場合(施行後に死亡した場合)については、民法改正前に遺言書を作成していた場合であっても、改正前の旧法の「遺留分減殺請求」の規定ではなく、改正後の新法の「遺留分侵害額請求」の規定が適用されます。

 

さて、そうすると、改正後の新法の適用を予定せずに、旧法の適用(遺留分減殺請求制度)を前提に遺言書を作成していた場合に、作成し直すこともないまま民法改正後に死亡した場合には、遺言者は意図せずに、改正法に基づいて遺留分侵害額請求の制度が適用されることとなります。

たとえば、遺言者がある相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書を作成し、義務者が権利者から遺留分減殺請求権を行使されても、義務者は価額賠償を選択せず、相続財産を共有または返還する結果となること(そうなったとしてもやむを得ない、あるいは当面は構わないとの判断)を前提として、その分の買取資金を義務者に準備していなかったような場合には、遺言者としても、今回の改正で予定が狂う結果となります。

義務者は、遺贈された相続財産の現物の一部を権利者に持ってもらうという選択ができず、金銭で権利者に支払いをしなければならず、しかも支払いができなければ相続した財産はもちろん、もとから持っていた固有財産についてまで、強制執行を受けるおそれが生じてしまうことになるからです。

 

その他にも、旧民法1034条但書に基づいて、遺言書に遺贈の減殺方法(順序)について遺言書に定めを置いていたが、改正後に亡くなったという場合に、この定めはどうなるのか、どのように解釈するのかについて、まだ必ずしも明確な答えが定まっていないところがあるようです(詳細は省略させて頂きます。)。

 

このように、民法改正前に作った遺言書については、改正により思わぬ影響を受けたり、あるいはどのような影響を受けるかが必ずしも明確ではない点がありますし、民法改正で配偶者居住権の遺贈などができるようになっていることなどからすると、民法改正前に作成した遺言書については、一度見直してみてはいかがかと思います。

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