遺言書がある場合の手続きについて
遺言書がある場合の手続きの流れは、以下のようになります。
相続人・遺産の調査
まずは亡くなった遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本を複数通収集して、相続人の調査、確定を行います。
遺産の調査や評価(価格の算定)も行う必要があります。
遺言書の検認
遺言書が見つかったら、まず家庭裁判所に遺言書の検認を請求しなければなりません。
ただし、公正証書遺言の場合は、検認は不要です。
検認とは、相続人に遺言の存在と内容を知らせ、その時点での遺言書の内容(遺言書の形状、状態、日付、署名などを含む。)を明確にして、以後の遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
裁判所が遺言の有効・無効を判断する手続ではありませんので、ご注意ください。
遺言書の有効、無効は重要な問題で、紛争の原因にもなりますので、その判断については専門家にご相談いただいた方が良いでしょう。
※遺言書の検認を家庭裁判所に請求するときに、収集した戸籍謄本を裁判所に提出する必要があります。
遺言の執行
次に、故人の遺言書の内容を実現するため、遺産を処分して金銭に換えたり、相続人や遺贈を受けた人に対する相続財産の名義変更や引渡しをおこなわなければなりません。
不動産の登記変更、金融機関に対する手続き、相続人らに対する現物の分配など多くのことをしなければならないことがあります。
遺言書の内容を実現するために、遺言執行者が就任し、または選任されることがあります。
遺言執行者は、遺言書で予め指定された者が就任する場合と、裁判所によって選任される場合があります。
遺言執行者を指定、選任するメリットとしては、遺言執行者がいない場合と比べて、金融機関の相続手続や遺贈登記が円滑にしやすいこと、相続人らが相続財産の処分や遺言執行者の遺言執行を妨げる行為をすることができず(しても無効となる)、さらに弁護士などの専門家が遺言執行者となれば、遺言をないがしろにしようとする相続人が発生しづらくなる結果として、遺言の内容が実現される可能性が高まること、相続人らが煩雑な手続を取らなくてすむことなどがあげられるでしょう。
遺留分侵害額請求
以上のように、遺言の内容が問題なく実現され、無事終了となればよいのですが、遺言や生前贈与の内容によっては「遺留分侵害額請求」(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)がされて相続人、受遺者間で紛争が生じることがあります。
「遺留分」とは、故人(被相続人)の財産について、(故人の兄弟姉妹以外の)法定相続人に最低限保証されている取り分(割合)のことです。
被相続人の遺言や生前贈与によれば、自分の遺留分すら相続できなくなってしまう法定相続人は、財産を多く取得した人に対して遺留分侵害額の金銭請求をおこなうことができます。
たとえば、被相続人が住んでいた居住不動産のように、複数人での分割がしづらい財産が主な相続財産である場合や、遺言者が過去に相続人の一部に対して大きな生前贈与したことがある場合に、この遺留分侵害額請求の問題が生じやすくなります。
遺言書があっても遺産分割をすることもできます
遺言書がある場合であっても、一般的には、法定相続人や受遺者ら全員が話し合って遺言書と異なる内容で遺産分割協議をすることができるとされています(ただし、遺言執行者がいる場合には注意が必要ですので、専門家にご相談ください。)。
遺言書があれば手続きは簡単!というわけにはいきません
以上のように、相続人調査、検認、遺言執行などの手続きが予定されているほか、遺言書の有効・無効の判断、遺留分侵害の有無、侵害額の計算、遺留分侵害額請求及びそれへの対応などが必要となることもあり、遺言書があれば弁護士の協力がなくてもいつでも手続きが簡単にすむ、というわけではなく、遺言書があっても多くのケースで弁護士への相談、依頼が必要となります。
遺言書があるけれど色々と不安があるという方はすぐに、当事務所の法律相談に申込みをしてください。